ホテルと旅館の違いを調べてみたら|法律が今のイメージを作った??

「ホテルと旅館の違い」と聞かれたら、何を思い浮かべるでしょうか?

「旅館は建物が日本家屋で、襖に仕切られた畳の部屋で、郷土料理が出て・・・」
「ホテルはコンクリート造りの建物で、各個室にベッドがあって、そこにユニットバスが付いていて・・・」


私のイメージも、だいたい上に述べたようなものでした。
要するに「ホテルは洋風で旅館は和風」という感じですね。

ただ、ホテルにしても旅館にしても、イメージ上の理由だけで、上記のような施設を作っているわけではありませんでした。
そこには、旅館業法という法律が関係していたんですね。

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ホテルも旅館も旅館業法に基づいて営業している


ホテルにしても旅館にしても、共通しているのは、「宿泊料金を受け取った代わりにお客さんを施設に泊める」という商売を行っている点です。
このように、不特定のお客さんから代金を受け取って宿泊場所を提供し、それを継続していく営業の事を「旅館業」といいます。

そして、日本において旅館業を行う場合は、旅館業法という法律の規定に従って行わなければならないとされています。
ホテルにしても旅館にしても、旅館業法の規定に従った形で営業をしているわけですね。

旅館業法のホテル営業と旅館営業


ホテルと旅館の違いは旅館業法の規定から

旅館業法の第2条に、ホテル営業と旅館営業の定義が規定されています。

<ホテル営業>
洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業


<旅館営業>
和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業


法律の条文からもわかるように、ホテルは「洋式」、旅館には「和式」という言葉が入っています。
見方を変えると、この規定に従った施設を作って営業をしてきたから、ホテルと旅館には冒頭のようなイメージが定着しているといえるかもしれません。

※旅館業法には他に、簡易宿所営業と下宿営業という業態も規定されていますが、この記事ではホテルと旅館に絞って考えます

ホテルと旅館には設置しなければならない設備にも違いが


旅館業法の規定を補完し、もう少し細かい部分を規定している旅館業法施行令という決まりがあります。
この施行令の中で、ホテルと旅館の構造や設備について、もう少し具体的な要件が定められています。

全ては網羅できないのですが、特徴的なものをいくつか挙げていきます。

<ホテル>
・客室の数を10部屋以上にする
・部屋は洋室で、1部屋の床面積は9平方メートル以上
・部屋の出入口と窓以外はきちんと壁で仕切る
・出入口は鍵が掛けられるようにする
・洋室の浴室又はシャワー室を設置する
・トイレは水洗式で洋式のものにする
・部屋の外にある共用トイレは男女別に区別する



出入口に鍵をかけられたり、部屋はきちんと壁で仕切るというのが要件になっていることから、ホテルは宿泊者のプライバシーを重視するという思想に基づいているとも考えられますね。
そうすると、カーテンやシェードで区切っただけの施設は、法律上はホテルに当たらないということになります。
それから、ホテルというと三点式のユニットバスをイメージするかもしれませんが、これも上記のような決まりに沿うように作った設備だからなんですよね。

<旅館>
・客室の数を5部屋以上にする
・部屋は和式で、1部屋の床面積は7平方メートル以上
・適当な規模の入浴施設を設置する
・近隣に入浴施設があれば、施設内に浴室が無くても可
・適切な数のトイレを設置する



ホテルの規定と見比べてみると、まず部屋の数から違います。
旅館の方が、小規模の経営でも行うことが可能になっているんですね。

そして、部屋の広さについても違いがあります。
ホテルの方が部屋を広くしなければならないのですが、これはベッドを置くことを想定しているからと考えられます。

旅館の場合、ホテルのように部屋を壁で囲んだり、鍵を設置する必要もありません。
つまり、襖や障子で仕切っただけの客室であってもOKということですね。

そして、入浴施設についても、旅館では設置をしなくて良い場合があります。
温泉旅館で、旅館の向かいに公衆温泉がある場合などは、旅館内にお風呂が無くても問題ないという事になります。

そして旅館のトイレはホテルのトイレと違って、洋式にしなくてもよいとされています。
また、共用トイレについても、必ずしも男女の区別をつける必要がありません。

ホテルと旅館では、設置しなければならない設備の最低ラインが、かなり違っているのがわかります。
総じて、ホテルを営業するハードルの方が高いといえますね。

ちなみに、ホテルであっても和室を設けることができますし、その逆も可能です。
その場合、和室は旅館の規定に合わせた部屋にする必要があり、洋室はホテルの規定に合わせた部屋にしなければなりません。

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法律が先かイメージが先か


旅館業法という法律をよく見てみると、実は昭和23年に施行された古い法律であるということがわかります。
昭和23年といえば、第二次世界大戦から2年しか経っていないという時期になります。

戦前から営業をしている宿泊施設なんて、ほとんど存在していません。
今、営業しているホテルや旅館はほぼ全てが、この法律の規定に合わせて施設を作ってきたといえます。

冒頭に述べた「ホテルが洋で旅館が和」というイメージは、旅館業法の規定に合わせて様々な宿泊施設が開業し、その施設を利用する過程で一般に定着していったものと考えられます。
そう考えると、旅館業法という法律が、今日の「ホテルと旅館のイメージ」をつくったともいえます.

ですが、その法律が「ホテルはこうで、旅館はこう」というイメージに基づいて制定されたともいえるので、「卵が先か鶏が先か」の無限ループに入ってしまいますね。

旅館業法の4つの形態についても調べてみました

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今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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